芦生の森(2)/05.11.22-23


一夜明けて、本日も快晴。山の家のおばあちゃんが作ってくれた、おいしい朝食をたっぷりいただきました。オーナーは帳場で相変わらずムスッとしていました( ^-^;)。
前もって頼んでおいたお弁当を受け取って、さあ出発しようかという時、オーナーがツカツカと寄ってきて、1枚の紙切れをズイと突き出しました。

「これ持っていけ。ブナノキ峠の地図だ」

なんとそれは、オーナーが実際に踏査して作ったものらしい、手描きの地図のコピーでした。ブナノキ峠を中心に、国土地理院地形図や「山と高原地図」には載っていない登山道や、ブナ・ミズナラ等の植生が詳しく描き込まれており、とってもレアで価値あるものでした。

オーナーがしじみたちを認めてくれたのか、はたまた「こいつらは見るからにヒヨワでモヤシっ子で、遭難したら確実に死んじまいそうだから、せめて迷わないように地図でもくれてやろう」と思ったのかは分かりませんが( ^-^;)、ともかくたいへんうれしいことです。ありがたくいただき、お礼を言って出発の途につきました。

歩く道々、あらためて地図を見てみると、詳細なコース図の片隅に、こんなかわいいイラストが。

オーナーはああ見えてとってもお茶目な人だったのかもしれません。もっとお話すればよかったな・・とKさんともども反省しました。

さて、本日のコースは内杉谷をさかのぼり、ケヤキ峠からブナノキ峠往復、そして下谷を下って長治谷に出て、そこから往路をひたすら引き返すという長大なものです。芦生の森の中心部であるこの一帯は「京大演習林」と呼ばれ、その名の通り京都大学の管理下にあり、大学の教授や学生によって様々な自然観測が行われているそうです。こんな森に入りびたれるなんて、しじみも京大に入ればよかったなあ・・(学力を思いっきり棚に上げた発言)

しかしこのコース、正直言って最初の内杉谷川はあまり面白くありません( ^-^;)
車が通れる広さの林道が延々と続き(※ただし入口に車止めがしてあるので、関係者以外は車では入れない)、歩くのはラクなのですが、周囲が杉やメタセコイアの人工林で、イマイチ自然が感じられないのです。
もっとも、他の地域でよくあるような、半ば遺棄されて荒れ放題の植林と違って、ここの植林はよく手入れされて文字通り「林立」していて、見事といえば見事なのですが。例によって写真がないので、風景は芦生山の家サイトのこのページをご参照ください(毎度手抜きですいません・・)。

長い長い道をヒイコラと登る我々の横を、乗用車がさっそうと駆け抜けていきました。先に書いた通り、ここは関係者以外車乗り入れ禁止ですから、この車の主は京大関係者に違いありません。

しじみ

Kさん
しじみ

Kさん
しじみ
「ちくしょー、車がうらやましいなあ。
 京大関係者の身内がいれば、車でケヤキ峠までいけるのになあ」
「身内に京大関係者がいるの?」
「いるわけないでしょう」

「・・決めた。私、甥っ子を京大に入れる」
「じゃあオレも姪っ子を入れます」

こんなことのために京大に入れられる甥や姪もたまったもんじゃないですが、特にしじみの姪の場合はあと17年ほど待たないといけないので、何とも気の長い話です。

3時間弱ほどかけて、ケヤキ峠に到着。ここからブナノキ峠の尾根にとりつきます。ちなみに「山と高原地図・京都北山2005年版」では、ここの登山口の位置が間違っているのでご注意ください。ケヤキ峠の十字路(というか「X字路」)の、ほぼ真南に延びる細い登山道がブナノキ峠登山口です。オーナーの地図はバッチリそうなってました。さすが〜。(ただしオーナーの地図はなぜか南を上にして描いてあるので、ちょっととまどいましたが・・)

この尾根道はまさに原生林の中を進む道で、しじみもKさんも大満足。うっそうとした森の中の小道を30〜40分ほど歩いて、ブナノキ峠頂上に到着です。

「峠」という名がついていますが、ブナノキ峠はいわゆる峠(=鞍部、またはコル)ではなくピークです。東隣りの「傘峠」もやはり峠ではなくピークです。この地方特有の呼び方かと思ったんですが、よく考えたら奈良の大台ヶ原の「逆峠」も峠ではなくピークだったな・・と思い当たりました。広い原生林を有する地方では遠望がきかず、ピーク地形でも「山」とは認識しにくくて、「峠」と名付けてしまったのでしょう。そんなところからも、この森の広大さが伝わってきます。(珍しく真面目トーク)

少しだけひらけている頂上で昼食。山の家のおばあちゃんが作ってくれた、おいしいお弁当を平らげました。のんびりしたいところですが、まだまだ先に進まねばなりません。ケヤキ峠に引き返し、その後の進路を読図しようとしたしじみは、ふとオーナーの地図を見て「しまった・・」と絶句してしまいました。

オーナーの地図には樹木の植生が詳しく書いてあるのですが、今さっき行ったブナノキ峠からほんの少し南に下ったところに、芦生杉やヒノキの巨木群落があると書いてあったのです。「オバケ杉」「芦生杉・幹周7.85m」「ヒノキ幹周6.13m」・・。クマちゃんに注目しすぎて肝心なところを全然読んでませんでした。もう引き返す時間もなく、泣く泣くこれらの巨木群落見物はあきらめました。Kさんの白い目をふんだんに浴びつつ、しじみは下谷へ向かいました。

下谷も車の通れる林道が続き、やや趣に欠けるのですが、内杉谷川と違ってカツラやトチノキの巨木が点在し、苔むしたズン胴の異形が時々目を楽しませてくれます。写真があんまりないので、詳しくは芦生山の家サイトのこのページをご参照ください(そんなんばっかし・・ ^-^;)。


巨木。カツラの木かな?

また、Kさんが下谷の川辺に下りる道を発見し、林道にも飽きたので下りてみました。するとこれが大正解。落ち葉と苔に彩られた谷を散策でき、巨木も間近に見られて、ようやく芦生の森の本領?を味わえました。これが夏だとクマやマムシにおびえながらの散策になるので、そのへんを気にせず存分に景色を楽しめたのは、11月に来た特権であったと思います。


こんな景色が続きます。


根元から二股に分かれたヘンな木発見。
彼の幼少期に何があったのでしょうか・・。

川辺の道はずっと続いているわけではなく、たびたび途切れて先に進めなくなるので、林道に戻ってはまた川辺に下りる・・をくり返して、下谷の自然林を満喫しました。そしてついに長治谷(扇谷ともいう?)の出合に至り、時間も2時近くなったので、ここで引き返すことにしました。

しかし帰路は、覚悟していたとはいえ、まあ長いこと長いこと・・。ひたすら林道なので、迷ったり転倒滑落といった危険はないのですが、そのぶん単調・・( ^-^;)
風景にもいささか食傷し、Kさんと映画や漫画の話に終始していました。Kさんと映画の好みが決定的に合わないことが判明して凹んだりしながら、延々3時間ばかり歩き続けました。

もう薄暗くなってきた5時頃、山の家の駐車場に帰り着きました。オーナーに無事帰還を告げに行こうとしたのですが、山の家は閉まっていました。今日は宿泊客がいないようです。残念・・。いろいろありましたが、ここは本当に良い宿でした。

また車で由良川沿いの細道をおっかなびっくり走って、帰路につきます。途中、美山町の観光施設「美山町立自然文化村・河鹿荘」に寄りました。ここには日帰り入浴施設があるのです。バラの花かごやリンゴが浮かぶお風呂(「薬草風呂」だそうです)で疲れを癒しました。温泉ではないようですが、いい湯でした。ここには食堂もあり、鹿刺しなどおいしい山里料理で空きっ腹を満たしました。

後は京都市街に向けて周山街道をひたすら南下・・のはずだったのですが、カーナビにだまされてまたまた細い山道に迷い込み、グネグネ道に神経をすり減らしながら何とか帰り着きました。まったく今回の旅行は、登山よりも車の運転の方がはるかに疲れた・・( ^-^;)

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