ビバーク演習<1>

自慢じゃありませんが、しじみはこれまで遭難したことがありません。何をもって遭難というかにもよりますが、予定通り下山できず、やむなく山中で一夜を過ごした・・ということは幸い一度もないのです。

しかし登山を続けていれば、いつかはそういう事態に陥るかもしれません。ビバーク(不時露営)グッズと呼ばれる物はいつも一応装備していますが、遭難しない以上は使うこともなく、ずーっとザックの中に眠ったまま。これらのグッズは本当に遭難時に役に立つのか?その疑問は長らくしじみの胸に渦巻いていました。

いざ遭難という時に、使ってみたら「ごめんなさいシャレでした」では笑えません。やはり一度は使ってみて、性能を確かめる必要がある・・というわけで、3月中旬のまだ寒いある日、近くの山中で「ビバーク演習」略して「ビバ演」を決行いたしました!しじみの炎のチャレンジャーっぷりをとくとご覧あれ!!

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PM3:30
「何もそこまでネタに生きなくても」と止める家族をふりきって、装備一式を車に積み込み、近くの某山へ。まずは慣れない手つきでツェルトを張ります。ツェルトを張るのは買った時以来2回目です。

・・いきなりここでやらかしてしまいました。上の写真を見て、おそらく師匠あたりのベテランハイカーは大爆笑なのではないかと思います。

そう、ツェルトの裾(?)というのは左右に広げるのではなく、本当は内側に折り込んで床にするのが正解なのです。(このページの「ビバーク・ツェルト1」参照)
しじみはギャグではなく、この時はマジで知らなくて、ツェルト内には広告チラシを敷き詰めて床にしていました。写真であらためて見る左右の裾の広さに、顔から火が出る思いであります( ^-^;)

テントサイト、じゃなかったツェルトサイトはこんな所です。標高は300m程度なので、気温は平地とさして変わりません。本当はせめて700m、できれば1000mぐらいの所でやりたかったのですが、そんな高さまで車で行ける場所が思いつかなかったので、高度が足りない分は着る服を少なくして調節することにしました。そこらへん適当です。

ただご覧の通り、隣が滝壺なのでマイナスイオンたっぷり&清涼感もたっぷりで、3月ですから清涼感というかひたすら寒いです。なのでそれなりにビバ演たる条件ではあったかもしれません。

ツェルトの中はこんな感じ。エアマットを敷いて空のザックを敷いて寝床完成。左右の裾を広げたおかげで横幅も広く、退屈しのぎの本とか置きまくりです。この広さが後でアダとなるのですが・・。

PM5:00
車に戻ってインスタントカレーを作って食べました。ツェルトの中でカロリーメイトとかかじってた方がビバークらしいのですが、自分にやさしいしじみはそこまで頑張りません。

PM6:00
日が暮れてきたので、ツェルトに再び潜り込みます。後は寝るだけ・・なのですが当然ちっとも眠くありません。ひたすら持ってきた本を読みます。
この時、服装は上4枚(シャツ2枚+上着+合羽)・下3枚(化繊タイツ+ズボン+合羽)・靴下2枚。さらに足は空のザックに突っ込みます。

PM7:00
日没後は急速に冷え込んできて、手元の温度計で5度(ツェルト内)。ムダに広いツェルト内空間、そしてチラシを敷いただけの地面に、熱はみるみる拡散し、どんどん冷えていきます。早くも震えるような寒さになってきました。

しかしオレにはとっておきの秘密兵器がある!それはレスキューシートだ!!「毛布の2〜3倍の保温力」があるらしいこいつにくるまれば、無雪期のビバークは大丈夫なはず!さっそく開封して、アルミのシートにホイル焼きのシャケのようにくるまってみました。


何だこの写真

・・ところが。サイトでも絶賛したはずのこのシート、悲しいことにビバークでは、思ったほどの効果はありませんでした。いや確かに断熱力はかなりのもので、ところどころは暖かいのです。しかし思わぬ欠点がありました。このアルミのシートは、毛布のように柔らかくはないのです。クッション性がないというのではありません。くるまろうとしても体に密着してくれない(隙間ができる&開いてくる)のです。

手を使って体に巻こうとしても、巻いたその手がしまえない。そしてそこここに空いた隙間から寒気がどんどん入り込んできて、いつまでたっても寒い寒い。シートは起毛どころか凹凸すらありませんから、暖かい空気を貯める能力に乏しく、隙間のできない部分部分しか暖まらないのです。誰かオレをガムテープでグルグル巻きにしてくれ!とマジで思いました。もちろん誰もいないんだけど・・。

PM9:30
寒くてかなわず、使わないつもりだったフリースの防寒着(上着)を着ました。これで少し落ち着きました。

PM11:30
ツェルト内気温3度。寒さはおさまらず、とうとう車に戻って防寒帽とタオルケットを持ち出しました。登山装備にないものを使ったため、この時点で演習は失敗です・・。

AM1:30
まだ寒くて、2枚目のレスキューシートを投入。床に敷いて断熱を試みました。最初からこれをするべきだったと思います。いまや断熱もなにも、もうツェルト内自体冷え冷えなんだから・・。

AM3:30
車に撤退。ヒーターをガンガンかける。
演習とかもう知ったことではない。

何の写真だか分かんないと思いますが、ツェルトの外側に霜が降りているのを撮ったものです。すなわちツェルト外は氷点下だったわけです・・。

AM4:30
車の中で朝食。またインスタントカレー。

AM5:30
夜が明けたのでツェルト撤収。泣きながらそそくさと家路につく。

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・・そんなこんなで大失敗に終わったビバ演。使い方を間違っていたツェルトはともかくとして、信じていたレスキューシートが惨憺たる有様だったのはショックでした。

しかし「ダメであることが分かった」だけでも進歩です(ポジティブ思考)。ビバ演によって自分のビバーク態勢の改善点は見えたので、その後は師匠に教えを乞うたり、自分でいろいろ調べたり。装備にもある程度改革を加えて、この頃ようやく落ち着きました。

というわけで、次ページでは反省に基づくしじみの新・ビバーク対策をご紹介!!
そう、このように、人は失敗によって大きくなっていくのさ・・。
(でもツェルトの写真は正直恥ずかしすぎて掲載を迷った・・)


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