山の魔術 ==X-FILE==

登山中に時々起こる謎の生理現象・心理現象を3つご紹介。ハイカーの方なら1つぐらいは経験があるのでは? (3つともかかっちゃうバカはしじみくらい・・)

【餓鬼憑き(がきつき)】

歩行中に突然ものすごく空腹になり、歩くことさえおっくうになる現象。昔々、人々が歩いて旅をしていた頃は山道でこれにかかる人が多かったようで、「餓死者の亡霊のしわざ」として恐れられていたそうです。

この餓鬼憑き、しじみは2回体験しています。猛烈な空腹感とともに、まるで風船がしぼむように体の力が抜けていき、視野狭窄まで起きてかなりアブナイ状態になりました。2回とも登山中の出来事ですが、特にいつもの登山と変わりなく、何が原因で起こるのかはよく分かりません。一時的にカロリー消費が運動量に追いつかなくなるのかな?などと考えています。ちなみに2回目は最初にかかった友人Mから伝染しました。アクビみたい。

対処法は簡単です。何か食べればすぐおさまります。予防策としては、小休止の時にヴィダーインゼリーなどの消化の良い栄養食品をとると良い・・と思います(なんせ原因不明なので)。

【上昇志向症候群】

別にサラリーマンの話ではありません。しじみが勝手に名付けた、登山中の心理現象の一種です。

登山とは山に登って下りてくるスポーツですが(何を今さら)、頂上までひたすら登りということはほとんどありません。全体的には登り道でも、その中には当然アップダウンがあります。

しかし。登り道の途中で、登り道と下り道に分かれた分岐に出くわした場合、人はどうしても登り道を選んでしまう傾向があります。せっかく稼いだ位置エネルギーを失いたくないからです。で、実は下り道が正しいのに、よく確かめもせずに登り道をずんずん進んでしまい、後で自分を呪うハメになるのです。ああ恐ろしや・・。

もちろん、下山時には逆の「下降志向症候群」もあります。対処法としては、自分のカンとかに頼らず、マメに地図やGPSで現在位置を確認することです(これがなかなかできない・・)。

しじみとMの場合は、道に疑問を感じたどちらかが「読図!」のコールをすると、すかさずMがコンパスを構え、しじみがサッと地図をさし出します。そんな女房役が板についた自分が少し悲しいです。

【火事場のバカ】

「バカ力」ではなくただの「バカ」です。これもしじみが勝手に命名しました。

難易度の高そうな登山ルートに初めて挑戦する場合は、「この時間にこの地点まで到達できなかったら引き返そう」という撤退時間をあらかじめ決めておきます。

しかし、いざ時間が近づいてくると「ここまで来たんだから」という執着が出て、引き返したくなくなってしまいます。特に来た道がヤブや崩落の多い荒れた道だったりすると、「またあそこに戻るの・・」とゲンナリしてしまうのです。

そこで、いよいよ撤退5分前とかになると、突然体力のリミッターを解除して、猛烈にダッシュしたり、滝を登ったりするバカがいるわけです。「もうちょっと!もうそこが頂上だから!」とかいいながら。何の根拠もないくせに。

火事場のような狭い空間での非常事態なら、一時的に人体の限界を超えた怪力を発揮して危機を脱するのもうなずけます。しかし、広い山の中で一人火事場状態になっても、ムダに体力を消耗するだけです。帰りの長い道のりを考えると自殺行為とさえ言えます。バカ力のご利用は計画的に・・。いさぎよく退く勇気も大切です。


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