大納言 Attack2



畜産団地への2回目のアタックは、初冬に入った12月上旬の日曜日。今度は簡単にクリアできるだろうと考えたしじみとMは、午前中は近隣の別の山(烏ヶ嶽・485m)に登り、午後になってからアセボ峠に立ちました。半日あれば十分だろう、とナメきっていたわけです。

大納言山頂に着くと、猟銃を持った猟友会か何かの一団が、そこにたむろしていました。イノシシ撃ちでもしていたのでしょうか。もう猟を終えて下山するところのようです。

ここで彼らに畜産団地までの道を聞けば良かったのですが、我々の頭の中ですっかり「畜産団地=国家機密」のイメージが固まっていたため、ヘタに関係者に聞いたら撃ち殺されると思って、我々は彼らにあいさつもせずにそそくさとすれ違ったのでした。彼らにしてみれば、そんな我々の方がアブナイ奴らに見えたでしょうが。

ところがどうしたことか。この時、彼らについていた猟犬たちのうちの1匹が、突然集団からはぐれて我々の方にやってきたのです。

犬は親しげにすり寄ってきて、何やら知ったふうな顔つきで、我々を先導するかのように歩き始めました。いいのかなーと思って猟師集団を振り返っても、彼らはまったく気にかける様子もないようです。

犬は自信満々に木々の間を歩いていきます。こりゃ間違いない、と思ったしじみとMは、そのまま犬について、方向も確かめずに進んでいきました。犬が先頭なんて、後から考えれば金魚のフン以下のパーティーですが。

犬に連れ回されてずいぶん山奥まで入り込み、これはまずいと思い始めた矢先、遠くで銃声が聞こえました。すると犬は突然急斜面を駆け下りてブッシュにもぐり込み、あっという間に見えなくなってしまいました。だ・・だまされた!?

後に残されたしじみとMはボーゼン。ここはどこだ?畜産団地は?またしても我々は現在地ロストに陥ったのでした。まったく何のために地図とコンパスを持ってきているのか・・。

追い打ちをかけるように雨が降ってきました。12月ともなればそれはかなり冷たく、ものすごくブルーになったMとしじみは引き返すことに決め、不確かな記憶をたどって山中をさまよったのでした。

数時間後。急斜面を登ったり降りたりしてだいぶ疲労が濃くなってきましたが、まだ我々は山の中でした。現在地点から北に進むか東に進むかで意見が割れたしじみとMは、降り続く雨の中、寒いし体力は奪われるしで気分がすさみ、険悪なムードでした。

だいたい何で午後から山に入ったんだ!なんで犬なんかについていったんだ!何だって雨まで降るんだ!(もはや言いがかり)・・まあそれはお互い口には出しませんでしたが、それぞれ自分の進路をゆずらず、一触即発状態でした。しかし。

ここで決裂して別行動をとれば、どちらか一方は迷って死ぬ。
ここで殴り合いでもして夜まで山を出られなければ、こごえて2人とも死ぬ。

・・2人ともそれが結構リアルに実感できる状況だったので、なんとなくお互いに矛をおさめ、結局我々は東に進みました。そしてようやく見おぼえのある場所にたどり着き、大納言に戻ることができたのでした。

おそらく北に進んでも畜産団地に出て助かっていただろうし、一晩中さまよっても肺炎くらいで死ぬことはなかったかもしれません。でもそれは結果論。極限状態でも一応理性的にふるまえる(御都合主義ともいうが・・)パートナーであることがお互いに分かって、我々にはそれはそれで収穫でした。

まあそれ以前に、前段の失敗の数々が校庭10周モノの大反省事項で、それまで読図をサボりがちだった2人には良いクスリになったのですが・・。

そういうわけで、2回目のアタックも惨敗でした。だいたい1回目の反省がまったく活かされてないし・・。


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