ダンノ峠(廃村八丁)


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◆ 登 山 録 ◆

廃村。このなんとなくミステリアスな言葉がそれはもう大好きなPさんは、しじみと知り合ったその日から、京都・京北町の山奥にあるという「廃村八丁」に行きたい行きたいと言い続けていました。変わった人だなと思いました。

一方、怖がりなしじみは、廃村といえば「祟りじゃ〜」という白髪の老婆とか鎧武者がいるんじゃないかとおびえ、「いやあの、交通の便が悪いから」とか適当な理由をつけてしぶっていました。しかしPさんが山登りに来てくれなくなることが最も怖いしじみが彼女の希望を断り続けられるはずもなく、8月のある週末、八丁廃村に行くことが決定したのでした。

ところが、その週末の天気予報は雨。前日の夜に降水確率90%の予報を見たしじみは、Pさんに電話しました。「明日は雨みたいなんだけど・・」

「それがどうしたの?」

すごい。この姉さんはホンモノだ。なんだかよく分からないけど感動したしじみは雨天決行を宣言。朝から雨が降っていたので、水に弱いデジカメは家に置いて、京阪電車の出町柳駅に向かいました。

出町柳駅でPさんと合流、バスに乗車。ここのバス停は、いつもは京都北山や比良山系に向かう登山客でにぎわっているのですが、今日は一人もいません。だってもう雨はじゃじゃ降りだし。バスに揺られて約一時間、乗客はしじみとPさんだけになり、車内で合羽を着込んで、運転手さんに心配されながら、菅原というバス停で下車しました。

民家の脇にある登山口から、まずダンノ峠を目指します。もうこの時点で二人ともビショ濡れ。しじみは「水もしたたるイイ男!」とギャグをかまし、Pさんは冷めた目で完全無視。Pさんの辞書に「愛想笑い」という言葉はありません。まっすぐでいいんじゃないですか。

ダンノ峠まではけっこう急登で、バテたしじみはPさんに励まされながらなんとか登頂。ここからは下りが続くのでホッと一息。

ササをかき分けながら進むと、道の脇に山小屋を発見。「同志社大学・新心荘」の文字。森林演習とかで使う小屋でしょうか。でもカギがかかっていて入れません。同大学とは犬猿の仲で知られる京都の某大学出身であるしじみとPさんは、「ケチー」「どケチー」と同志社批判を並べ立てながら小屋を去りました。(同志社関係者の方、見てたらゴメンナサイ。←低姿勢)

刑部滝を経て、あぶなっかしい腐りかけの丸木橋を渡ります。道はかなり荒れています。ホオの木の大木があり、雨に煙ってなかなか壮観でした。Pさんが記念に葉を拾っていました。ホオ葉ミソでもするの、と聞くと、そうではなくて押し葉にするとのこと。食い気ばかりでスイマセン。

そして廃村八丁に着きました。点々と並ぶ廃屋。朽ちかけたお堂。謎の石壁。どんな雰囲気かはいろいろな人がホームページでとりあげてますので、そちらをご覧ください(他力本願)。わりと有名スポットなんですね。
コケむした石垣にノスタルジックな想いをはせているPさんに、「コケがとってもコケティッシュだね」って言ってまた無視されちゃったよ!

雨よけのため一軒の廃屋に入り、さあ昼食、と思ったら腕に違和感。
ん?腕時計のバンドって茶色だったっけ?

ヒ ル だ ー

しじみとPさんの腕や足や首、あちこちにヒルがはりついていました。Pさんの前なので虚勢を張って、叫びたいのをこらえてヒルを落とすしじみ。ひえええはがれない!貴様の熱烈なキスなどいらんわー!いやもうダメ手が震えてる。Pさんの足についたヒルをなんとか落とし、自分の首についたヒルをとろうと四苦八苦しているところに、ひょいと手をのばすPさん。

コノ人、素手デヒルヲ持ッテルヨ。

ヒルをポイと捨て、平然としているPさん。やっぱりあなたはホンモノです。舎弟にしてください。改めて彼女のすごさを知った瞬間でした。ていうかしじみさんカッコ悪すぎ。

温かいホットサンドで腹を満たした後、ちょっと村内を探検。お?あまりいたんでない家もあるぞ?あれ?畳が新しい!貼り紙がしてある・・なになに、「廃村八丁・村長の家」!?

どうやらこの廃村には今でも自称村長がいらっしゃるようです。ここに住み込んで、山林管理や登山客との交流を楽しんでいるとか(貼り紙や屋内のノートに書いてました)。廃村なら村長を自称しても問題ないもんね!ちょっとうらやましい・・。ご不在で会えなかったのが残念です。

自称村長(←しつこい)宅をあとにし、村を出て下山開始です。相変わらず荒れた道ですが迷うことはありません。って言ってたらソトバ峠でしじみが堂々と道を間違えて、登る予定のないソトバ山に半分ぐらい登ってしまい大幅時間ロス。峠からの下山路はジグザグの下り道が正しいです。登り始めたら間違いだと思ってください。って普通の人はまず間違えないとこですが。(地図を深読みしすぎました)

林道に出てほっと一息。でもここから小塩バス停まではまた1時間ほど歩かなければなりません。ヒルのとりっこをしながらテクテク歩きます。ようやく町についたものの終バスに遅れそうになり、しじみが猛ダッシュで発車寸前のバスを止めました。運転手さんと乗客の皆様、待ってくださってありがとうございました。

バスの中でも、靴の中にいたヒルを見つけてぎゃあぎゃあ大騒ぎ(主にしじみが)。バスを降りる時、運転手さんに「バスの中にヒルを落としていかれると困るんだよね」と怒られ、逆ギレするPさんをなだめながら全部つかまえて袋に入れたことを説明。ちなみにこの袋は50回ぐらい踏みつぶしてから駅のゴミ箱に捨てました。

結局最後まで雨に降られっぱなしで濡れしじみ(造語)の登山でしたが、雨の中から現れるホオの大木や廃村は幻想的で、雨粒の光るコケもきれいでした。雨の日の登山は独特の風情がありますね。ヒルさえいなければ良かったんだけどなあ。

ちなみに、この天敵がしじみのパンツの中に1匹残っていたため、その夜のしじみ家の風呂場には絶叫が響き渡ったそうです。だからヒルってキライだよ。

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