【金糞岳】 滋賀県長浜市


■本図は(財)日本地図センター発行の25000段彩・陰影画像を元に作成した。(同センター承認済)
■この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第82号)
※25000段彩・陰影画像は数値地図25000を元に作成されており、本図はその二次利用のため両文併記。

金糞岳(1)/2003年6月7日


かなくそだけ、と読みます。あまりきれいな名前ではありませんが、昔は何か鉱物を採掘していたのでしょうか。「こなくそ」みたいな語感が個人的には好きなんですが。

この金糞岳、追分という登山口から尾根伝いの立派な登山道があるのですが、しじみとMはあえてそこではなく、廃道となっている東俣谷川沿いの谷道を選びました。

というのも、ガイドブックの片隅に「深谷(東俣谷川のこと)の沢登りは健脚向きで、山慣れた人たちには快適な所だ」などと書いてあるのを目ざとく見つけたMが、

「俺たちはもうシロートじゃない、『山慣れた人たち』だ!この健脚向きコースを行こうじゃないか!尾根道なんか行くヤツはチキン野郎だぜ!」

などと、郊外の低山で二度も遭難しかけた者の言葉とは思えない気炎を吐き、御都合主義者のしじみもそれに同調して、一気に気分が盛り上がったからです。

追分登山口までは、車1台しか通れないような細いジャリ道を20分ほどドライブしなければなりません。この間、もし対向車が来てしまったら延々バックするしかないのです。それもできないペーパードライバーしじみの場合は、泣いてゴメンナサイするハメになります。なので金糞岳に行く時は、いつもMのジムニーで登山口までアクセスします(いつも、というところが伏線)。

林道を少し歩いて、ダムのフェンス裏にある細い道から登山開始。のっけから荒れてところどころ崩れた道です。しばらく行くと川を横断するところに出くわすのですが、落差3mほどの谷に、かかっているのは鉄製のサビたボロいハシゴだけ。もちろん手すりも何もナシ。

Mはスタスタと渡ってしまいましたが、高所恐怖症のしじみはそうはいきません。勇気を振りしぼってハシゴにとりつくのですが、そのたびに小学校で習った童謡が頭にリフレインします。

「小ザルが小ザルが木ぐつをはいて♪ゆかいなゆかいな橋わたり♪」

ちっともゆかいじゃねえよと思いながら、ハシゴに手をかけたり離したりを5分ほど繰り返したあげく、結局あきらめたしじみは川に降りて靴をはいたまま渡渉。水がたまった靴をガポガポいわせながら、Mに追いついたのでした。

ここからしばらくいったところで、我々は1枚の小さなアルミ板が木から下がっているのを見つけました。どこでもよくある、登山者が足跡として残した記念プレート。パーティー名と入山日が書かれたやつです。

「双里岳会」。そのプレートにはそんなパーティー名が書いてありました。これは何と読むのだろう?しばらく首をひねっていたしじみは、あっとひらめきました。

「ふたりだけかい」だ!うわー面白い!きっとメンバーは二人だけなんだ!二人だけなのに会を作っちゃったんだ!それで「二人だけかーい!」というツッコミの意味も込めてるんだ!すっげえこのセンス、電通も博報堂もハダシで逃げ出すぞ!!

冷静に考えればそんなに褒めちぎるものでもないのですが、しじみとMはすっかり盛り上がってしまい、双里岳会を勝手に師匠呼ばわりして、師匠たちの足跡を追うべく勇んで進んだのでした。

しかし盛り上がったのもつかの間、難所はここからでした。

赤テープを頼りに、ブッシュの比較的薄いところに頭からつっこむような道なき道。そして靴が乾く間もない川渡りの連続。健脚向きどころか、ここはもはや二足歩行の生きものが来るところじゃなーい!葉っぱやら泥やらクモの巣やらにまみれながら、しじみたちはだんだんこのコースのとんでもなさを思い知りはじめました。

谷の側壁にさえぎられて、GPSも「衛星信号ロスト」を繰り返すばかり。したがって現在位置はまったく分からず、山頂にどれだけ近づいているのかも不明です。時刻は2時を過ぎ、ついにしじみとMは続行を断念しました。そしてまた葉っぱと泥とクモの巣にまみれながら、来た道を引き返して下山したのでした。車まで戻ってきた時は、2人とも土の中から掘り出されたようなすさまじい汚れっぷりでした。Mと別れたあと、帰りの電車が恥ずかしかったですとも。ええ。

これで懲りればよかったのですが、一度とりついたコースは踏破せずにはいられない偏執狂である我々は、あきらめ悪く数ヵ月後にまた、追分登山口に立ったのでした。もちろん、チキン野郎の中津尾根コースには目もくれず、目指すは熱血硬派の試練道・東俣谷川コース・・。(救いがたいバカです ^-^;)


週刊やましじみ:登山よもやま話のサイト  TOP近畿の山>金糞岳1