もやしじみ

〜もやしっ子だって登山はできる〜

筋肉痛・バテ・むくみ対策編


何を隠そうしじみはもやしっ子です。 昔からいわゆる「運痴」で、体育の成績は常に3以下でした。スピードや腕力が必要な瞬発力系スポーツはことごとく苦手で、登山にのめり込んだのも、「とりあえず持久力さえあれば何とかなるスポーツだから」というのが大きな理由でした。そんなナナメ後ろ向きな自分が大好きです。

ところが近年、20代の若さにして、肝心の持久力さえ怪しくなってきました。登山中にバテたり、登山後に激しい筋肉痛にみまわれるようになってきたのです。

登山までダメになったら、もはやできるスポーツが無くなってしまう・・と危機感をもったしじみは、筋肉痛予防グッズを買いあさり、バテない方法に知恵をしぼり、試行錯誤の結果、そうした症状(?)をかなりおさえることに成功しました。体力にまかせて登っていた頃と違い、歳をとればとったなりの登り方があるんだな〜と実感したしだいです。(20代で言うことか・・)

というわけで、自らの体験に基づき、ヒヨワな体でも登山を楽しめるノウハウの数々を以下にまとめてみました!しじみと同じく虚弱体質を自認する方や、ちょっと体力に不安が出てきた中高年の皆様はもちろん、今は現役バリバリの方も、老後末永く登山を楽しむために読んでみてください( ^-^;)


【Vol.1 筋肉痛を防ぐ!!】

登山翌日、あるいは翌々日に、太ももやふくらはぎを襲う筋肉痛。少々の痛みならほっといていいんですが、階段が降りられなくなるほどの激ハリが毎度起こるようなら、これは根本的に何とかしなきゃいけません。

足に負担をを加え続けることで筋肉疲労がたまっていくのですから、これを防ぐには、体重を分散したり、衝撃を和らげればよいわけです。ということでそれ系グッズをいろいろ購入してみました! 以下、それぞれの道具の紹介です。



トレッキングポール


アーチハンモックソックス


インソール

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<トレッキングポール>
横文字だとかっこいいですが、ようするにです。体重を何割か預けられるので、確実に足への負担は減ります。しじみのように、下りの段差をドスンドスンと跳んで降りる悪いクセのある人は、これを持つことでかなり負担減になります。

また、疲労とは直接関係ありませんが、ポールは急な下りではストッパーとして安全歩行に役立ちます。下り道でよく転ぶ人、あるいはしじみのように、急坂を「ワーイ」と駆けおりて止まらなくなって岩に激突したなどの経験がある人は、ぜひポールを持ちましょう。また、跳び石を伝って川を渡る時にも、ポールを川の中にさせば体がぐらつかず、安心して渡れます。

たいへん便利なものなのですが、欠点は岩場や激しい段差(つまり越えるのに手を使わなければならない場所)にぶつかった時に邪魔になってしまうことです。縮めてザックに付けることもできるのですが、岩場ごとにいちいちそれをやるわけにもいきません。登るコースにそういった箇所が多いとあらかじめ分かっている場合は、ポールは持っていかない方がいいでしょう。

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<アーチハンモックソックス>
小汚い写真ですいません。この「アーチハンモックソックス」はミズノの開発した靴下で、ウォーキングの疲労を軽減する、というふれ込みで売られていました。

人間の足の裏は「土踏まず」があることによってアーチ状になっており、この形状が体重を多方向に分散して、衝撃を和らげます。しかし長時間歩くと土踏まずがつぶれて体重が分散されなくなり、衝撃によるダメージが大きくなってしまいます。
このアーチハンモックソックスは、履くと土踏まずを吊り上げるような構造になっており、土踏まずをつぶれにくくします。また、左右の足の形状に合わせて構造を工夫した「対称設計」で、よりよい履き心地が追求されています。(以上説明書からの受け売り)

特殊な構造のため、最初はやや違和感がありますが、慣れると快適です。ブレスサーモ製品で、薄いわりに暖かさもあります。左右を間違えないよう、わざわざ「L」「R」の文字がプリントされているのも親切ですが、なんだか自分が左右の区別がつかない幼児みたいに思われそうで、人に見られるのが恥ずかしいです。

このような骨格・筋肉保護材系の製品は「サポーター」と呼ばれ、このソックス以外の商品では、特に「膝サポーター」が人気のようです。各メーカーからいろいろなものが出ています。でもしじみが膝サポーターまでも使うのは20代として許されないと思うので、今のところ手を出していません( ^-^;)

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<インソール>
またまた小汚い写真ですいません。インソールとは靴の中敷きのことです(また横文字使ってみた ^-^;)。それ以前に入っていたペラペラの中敷きと比較すると、確かに衝撃がかなりやわらかくなった気がします。

インソールは衝撃吸収材としてはポピュラーで、こだわっている方も多いかと思います。しじみはお財布の都合で既製品を買いましたが、コルク材を自分で切り出すものとか、オーダーメイドで足型をとって作ってもらうものまで、上をみればキリがありません。ハマると恐ろしい世界です。ほどほどに・・。

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これらのグッズを一気に投入し、帰宅後はエアーサロ○パスを念入りに散布するようにしたところ、しじみはたとえ8時間登山をやっても軽度の筋肉痛で済むようになり、万々歳の結果となりました!!

・・ただ一つ悔やまれるのは、全て同時に使い始めたために、どれが最も効果があったのか分からないということです。サロ○パスが一番だったらどうしよう。



【Vol.2 バテを防ぐ!!】

「バテる」という症状は、車のオーバーヒートに似ています。エンジンつまり心肺機能が激しい運動によって限界に近づき、体が危険信号を発して運動を強制停止した状態が、すなわち「バテた」ことになるわけです。バテは必ず登り道で起き、下りにさしかかるとウソのように忘れてしまいます。これは下り道なら心肺機能をほとんど使わずに惰性で進めるからであり、このへんも車に似ています。

しかし車のオーバーヒートと違って、人間のバテの場合は回復に少なくとも1日以上かかります。もう頂上は目と鼻の先で、あとは下りばかり・・という場合を除き、バテたらその日の登山はあきらめて撤退するべきです。バテを押して登るというのはかなり危険。心肺に異常が起こるかもしれないし、注意力が散漫になって何でもないところで滑落するかもしれません。潔く引き返すのが一番です。

バテを防ぐ方法としては、心肺をオーバーヒートさせなければいいわけですから、「ゆっくり歩く」のが最も効果的です。特に登り始めはわざとノロノロ歩き、調子が出てきたら、MT車のギアチェンジのようにだんだん加速していけばいいのです。

この「ギアチェンジ」を滑らかにするのに有効なのが、いわゆるサプリメントの類です。しじみとMは「ヴァーム」を愛用しています。
こうしたサプリは即効がウリであり、登山の1時間も2時間も前に飲むと登る前に効果が切れてしまうので、しじみたちはだいたい登山開始30分前ぐらいに飲むようにしています。
また、こういうものを飲み始めると常習化してしまいがちですが、700m未満の無雪期低山ならわざわざ飲む必要はないと思います。サプリはハイクラスの山に登る時の秘密兵器としたほうが、心理的効果もいっそう高まって良いでしょう。

しかし、サプリを使おうが何をしようが、この「低速からだんだん加速」というのがうまくできない人もいます。しじみがそうです。しじみは無理な加速がいけないと分かっていてもついついスピードをあげてしまい、あげくに自滅するという「猪突猛進タイプ」なのです。

こういう人はどうするか?単独行の場合は「ゆっくり歩き」の練習を重ねるほかないのですが、パーティー登山の場合は、答えは簡単。自分より遅い人の後ろに着けばよいのです。最も遅い人を先頭に立ててペースメーカーにするのはパーティー登山の鉄則ですが、それは遅い人のためばかりではなく、速い人にとっても自滅バテのリスクを防ぐというメリットがあるのです。人より少々遅くても、着実にペースをあげ、仲間全員が快適に歩ける速度を作れる人は得がたい逸材です。

話はそれますが、このペースメーカー論に関連して、常々気になっていることがあります。それは「夫婦パーティーの並び順」です。

夫婦2人のパーティーは登山中によく見かける光景ですが、多くの場合、「旦那が先頭で奥さんが後ろ」という順番で登っています。でも普通、体力的に劣るのは女性である奥さんであり(例外もあるかもしれないけど ^-^;)、ならば奥さんを先頭にすべきではないか?と思うのです。

現に奥さんがめちゃくちゃ遅れていて、旦那が遥か先を歩いているという図も少なからず見かけます。これでは奥さんが道に迷ったり、人知れず滑落していても、旦那はまったく気づくことができず、たいへん危険です。(※1

・・まあ夫婦には夫婦の秘め事、じゃなかった決め事があるでしょうから、外野がやいやい言うこっちゃないか・・野暮な意見はこのへんにしといて、本論に戻りましょう( ^-^;)

あともう一つ、バテ防止に有効なのは、水をこまめに飲むことです。水分を十分に摂り、発汗によって体の温度を下げることで、オーバーヒートを防ぐわけです。これは登山に限らずどのスポーツでもそうですね。

「水を飲んだら疲れる」とか、ン十年前のスポ根論理を信じている人は今どきいないと思いますが、せっかく上がってきたペースを水飲み休憩でダウンさせてしまいたくないがために(あるいは同行の仲間に遠慮して)、飲みたくてもガマンする・・という人は多いと思います。しかしそれでバテてしまっては本末転倒。仲間としっかりうちあわせて、1時間に1回ぐらい強制水飲みタイムをとるようにしましょう。どうしてもペースを落としたくないとか、水を一滴も飲まずに半日ぐらいフルスピードで歩くバケモノのような仲間がいて休憩を言い出しにくいという場合は、プラティパスのようなハイドレーションシステムを装備するといいでしょう。

以上述べてきたように、バテの原因はほとんどいつも「ムチャな歩行速度」や「水不足」にあります。パーティーの仲間とこれらについてしっかりうちあわせておけば、バテはまず起こりません。純粋に体力不足でバテるということは、実はめったにないのです。連泊登山なら荷物の重さにアゴを出すこともありますが、日帰り登山の装備程度では、「重さバテ」もまずないでしょう。

ただまれに、「いつものペース」で登っているにもかかわらずバテてしまうことがあります。これは体調を崩す予兆です。たいていは風邪のひきかけなので、さっさと山を下りて家でねんねしましょう。

また、前日に夜更かしなど不摂生をした場合も、当然バテやすくなります。登山前日はしっかり睡眠をとりましょう(こんなのバテ以前の問題ですが・・)。無理は必ず後でたたります。あなたは忘れたつもりでも、体はおぼえているのです。



※1
ただし岩場の多い山など、歩行に技術がいるようなコースは、手本を示すために熟練者が先頭を行った方がいい場合もあります。また急な下り道では、後ろの人が滑ってスライディングタックルをかましてくるおそれがあるため、熟練者または体格の優れた者が先に行った方がいいでしょう。


【番外編:「むくみ」とは】

これはしじみの体験ではなく、一緒に登山をする女性陣から聞いた話ですが、女性は登山後に「手足がむくんでしまう」ことが多いようです。なんで女性に多いのか?と調べてみると、以下のようなことが分かりました。

人間の体は、水分が一定以上少なくなっていわゆる「脱水」状態になると、ホルモン分泌によって尿に回す水を少なくさせ、血管から皮膚の内側に水を放出するそうです。こうして皮膚の下に水がたまった状態が、「むくみ」となるわけです。

女性はどうやらこの「水分セーブホルモン」の発動タイミングが、男性よりも早いようです。さらに、女性の体は男性に比べて筋肉が少なくて皮下脂肪が多く、水をため込みやすい(水分を発散させにくい)構造になっているため、ホルモンの発動で皮膚下に放出された水をほとんど全て受け止めてしまいます。これにより、少しでも水不足を感じると、女性の体は即水ガメ化してしまうのです。

なぜそんなことになるかというと、女性の体は、「少ない水で長くもつ(=水不足に強い)」ように造られているからです。女性は子どもを産むために、男性より環境ストレスに強い体の設計になっているのですが(例えば、平均的に女性が男性より長生きするのはそのせい)、この水分貯め込み機能も、そうした対環境ストレス設計の一環なのです。極端な水不足に陥った場合、この機能によって女性の方が男性より長く生き延びられる。男性の体が「高出力・高燃費・短期決戦型」であるのに対し、女性の体は「低出力・省エネ・持久戦型」なのです。

・・なんだか保健体育の授業のようになってしまいました( ^-^;)
まあそんなわけで、女性は長時間運動をすると、実際にはそんなに脱水状態でもないのに体がさっさと水分確保に走ってしまい、皮膚の下にガッチリ水をため込み、結果として体がむくんでしまうのです。もちろんひとくちに女性といっても、かなり個人差はありますが・・。

むくみを防ぐには、バテと同じく水分をこまめにとればよい・・とされていますが、これはそう簡単にはいきません。そもそも女性の場合、体からあまり水分が発散されないのですから、運動中であってもあまり水は飲まない、いや飲めないのです(あくまで男性に比べて、ですが)。
根本的な原因が「体内の水分確保における構造上のアンバランス(全然のどが渇かないのに、体内では水分確保を始めている)」にあるため、たいへん残念ながら現在のところ、有効な防止策というのはなさそうです。(※1

むくみは特に体に害をなすものではないので、治らない場合は、もうこのさい無視しちゃってください。むくんでたってあなたは十分美しいのです。(誰に言ってんだ?)何度も登山を重ねていれば、そのうち体が慣れて、出ないようになるかもしれませんし・・。

「登山後のむくみ」は、長い場合は2〜3日に渡って出続けるそうです。登山はとっくに終わっとるわーい!とツッコミたくなる長さです。何かの病気の予兆かと勘違いして不安になる方も多いようですが、登山後すぐに発症した場合はまず間違いなく上記のような理由によるものですので、心配はいりません。

また、水分が体内に蓄積されるので、むくんでいる期間は一時的に体重が増えます。登山でたっぷり運動したのに太るってどういうことよー!と理不尽な思いをした女性も多いかと思います。あくまで一時的なもので、そのうち戻りますから、どうか登山を嫌いにならないでくださいね( ^-^;)

以上、女性にうといことでは定評のあるしじみが、がんばって調べて書きました!( ^-^;)女性陣の皆様、何かおかしい点があればメールフォームでご指摘願います。

なお、3000m級の高山でむくみが出たばあいは、単なるむくみではなく高山病の初期症状の可能性があるので、これは無視せず、大事をとって下山してくださいね。(珍しく真面目に終わってみる)


※1
「行動食や昼食で塩辛いものを食べて、体が水を飲みたくなるようにしむける」という作戦をKさんが教えてくれました。なるほどそれは有効かも・・(執筆時現在、むくみの出にくい冬なので実証ができませんが、夏場でも実際有効なら書き直します!)。
また、トウガラシ系の食品を食べて、発汗を促すのもいいかもしれませんね〜。


登山中に起こる「精神現象」についてはこちら



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